会員取材

株式会社システムクリエイツ 小杉 博俊

「写ミールVer.2」の存在を広く知らしめたい。使われ方はそれぞれの現場で進化するはずだから

「へりくつでものづくり」を発想の原点にあげる株式会社システムクリエイツの小杉博俊は、これまでに時代の流れに乗りながら数々のヒット商品を生み出してきた。そんな小杉が新たに生み出した「写ミールVer.2」について、詳しく語った。

株式会社システムクリエイツ

時代があとからついて来る

小杉博俊は、1942年生まれ。失礼を承知で書くと、67歳といえば会社員なら定年退職を迎えている年だ。しかしものづくりにおいて、小杉は常に第一線に立つ。「集団行動が苦手」と笑う小杉が独立して株式会社システムクリエイツを設立したのは1977年。32年前だ。一貫して「ユニバーサルでエコロジーでエコノミーな商品」にこだわっている。

独立して後は企業からの委託を受けて、コンセプト作りから、企画、開発、製造、パッケージやディスプレイを一環して請け負った。10年ほど前からは独自の視点でものづくりを行ってきた。設立時から「こころからのものづくり」を企業理念としている。不思議なことに、小杉が商品を市場に送り込むと時代があとからついて来るという現象がおきている。

例えば1985年から手がけた電子体温計の「けんおんくん」。体温計は病気の時だけに使う水銀のものが一般的だったが、健康管理の為に生活の中で使うというコンセプトのもとにネーミングやパッケージ、広告展開を企画した。おりしも生活習慣病予防の為の自己健康管理が話題となり、大ヒットとなった。その後多く出た「○○くん」というネーミングの先駆けともなった。

例えば1985年から企画や生産を手がけたレノマやバーバリーの手帳。それまで女性が手帳を持つという事は非常にまれだった。しかし翌年の1986年、男女均等雇用法が施行され、女性が一気に社会に進出すると同時に競ってブランド物の手帳を持ち始めた。

例えば1995年に開発した「CDメールパック」。CDを定形郵便物適合サイズと重量で90円で郵送できるパッケージのことだ。開発まで1年を要したが、製品化すると同時にWindows95が世に出、インターネットが一気に家庭にまでやってきた。その為、大手プロバイダーが入会案内CDと説明書を入れて量販店のラックに置くのに、「CDメールパック」は大いに利用された。

写ミール誕生のきっかけ

2009年5月下旬、時代よりもほんの半歩先を行く小杉が、新たに市場に出すもの。それが「写ミールVer.2」だ。「Ver.2」というからには「Ver.1」がある。「写ミールVer.2」を詳しく見る前に、それが生まれた背景を聞いてみた。

「2003年ごろ、私は、電波、情報通信技術の研究開発都市である横須賀リサーチパーク(YRP)に参画しました。私は根っからのアナログ人間ですが、 CDメールパックのヒットでインターネット業界の方々とお話をする機会を得るにつれ、これからはITの世の中だと思ったのです。しかもパソコンよりも、より身近な携帯電話の時代だと」

YRPで、小杉は多くの研究者と共に、次世代の携帯電話の可能性を模索、発案する日々を送る。そんな中、携帯電話の小さな画面を見ながらの会議やプレゼンテーションの場に、手作りのケータイ画面拡大用カメラを持参した。携帯電話の小さな画面を、大きなモニターに写せる、超小型のクリップ付カメラだ。それが他の研究者の目に留まり、口コミで広がっていった。「小杉が便利なものを作っているぞ」と。

「今考えると、私の発案したコンテンツはかなり画期的なものだったと思います。だけど、みんなコンテンツよりもカメラのほうに夢中になってしまいました(笑)。それで『自分用にも作ってくれよ』との声に、調子にのって量産したのです。多くの仲間に使ってもらうと、使い勝手面や性能面で不具合も見えてきました。そこでテストマーケティング版だったVer.1を改良して、Ver.2を本格的カメラとしてプロに依頼し、生産・販売していこうと決めました」

「写ミールVer.2」を携帯電話にクリップで留め、小さな画面をモニターに映し出す。プレゼンテーションの場から生まれた発想は、今後様々な場で活躍が期待される。

写ミールVer.2

こうして生まれたのが「写ミールVer.2」である。従来機種よりも機能や利便性を大幅にアップした。大きな特徴は非球面広角レンズを採用したことだ。これによって、携帯電話の画面だけではなくキーまでの広い範囲を一画面で写せる。これで、キー操作を見せながら変移する画面を見せることができるようになった。

カメラ用の三脚にも固定できる

他にも非球面広角レンズを採用したことにより、新機種の横型大型画面が写せたり、1cmの超接近から無限大までピントが合い、ゆがみもほとんどなくなった。

又、アーム機構を大幅に改良した。その結果、すばやくカメラ位置を決められ、コンパクトに折りたたみ出来る携帯性も向上した。

クリップも大型サイズに改良し、スマートフォン、PDA、ハンドヘルドPC、ノートPCにまで対応した。と同時に三脚用ねじ穴を新設し、カメラ用の三脚に固定できるようにした。

「元は携帯電話の画面を大きなモニターに写すという目的から始まりましたが、Ver.2は実物投影機としての使用場面を広げることを想定しました。ですから使用頻度の低いマイクは、思い切ってはずしました。会議やプレゼンだけではなく、もっと様々な場面で使っていただけるようにしたかったのです。その為、携帯に便利なキャリングケースを付けたり、オシャレで落ち着いたデザインにもしました」

広がる写ミールVer.2の可能性

ケータイコンテンツを多数の方に一度に見せる為の道具として「手作り」から始まった写ミール。改良を重ねた写ミールVer.2は、企業の会議室を飛び出して私達のもっと身近な様々な場面で使われようとしている。TVがない場所でもモバイルプロジェクターを使って、ワンセグケータイを大勢で観るなどという使い方や、ケータイゲームを大きなスクリーンでデモしたりといった遊びの場面でも使える。

ネイルアートなどの繊細な手元作業や耳ツボダイエットのデモ、教育現場からも多くのオファーがあるようだ。

「学校の先生が、30万円以上もする実物投影機を個人的に購入することが多々あるという話を聞きました。先生の手元を多くの子ども達に一度に見せるのに便利らしいのです。写ミールなら価格はその10分の1の38,000円(消費税込)です。ポケットマネーでも買っていただけるかなと思いました」

実物投影機として、教育現場や各種デモなどの場でも活躍の場が広がる。「日々の生活の中で、様々な使い方をして欲しい」と小杉は語る。

他にも手元の本を写ミールで写し、モニターで文字を大きく拡大して読書をするという使い方もあるそうだ。しかし小杉が最も感動した使い方は「目の不自由な知人から、漢字交じりのメールを受け取りました」という報告を受けた事だと言う。

「携帯電話の小さな画面の文字は読みづらかったのでしょう。ブラインドタッチで打たれたと思われるそれまでのメールは全てひらがなだったそうです。それが写ミールで画面を拡大して大きなモニターに写すことによって漢字に変換することができた。『そんな使い方もできるんだ』と感動しました」

「へりくつでものづくり」

小杉のものづくりへの情熱や発想、視点は熱くてユニークだ。衰えることを知らない。「写ミールVer.2」を携帯電話にセットしながら、「私の携帯電話はPASMO搭載型なんですよ」とさらりと言う。

「ものづくりより楽しい事ってないですよね」と小杉。

Suica搭載型の携帯電話は広く普及しているが、PASMO搭載なんてあったかな?と戸惑う筆者に、茶目っ気たっぷりの顔をして見せてくれた小杉の携帯電話には、 両面テープでPASMOカードが貼られていた。これが小杉の言う「へりくつ」、 発想の原点なのだ。

「『もの』とは、分厚い取り扱い説明書を読まなくても、簡単で直感的に使える道具でなくてはいけないと思っています。シンプルで機能的、価格も手ごろ。そして今までにはなかった発想。そんな『もの』が世の中に出たら、様々な現場で色々な使われ方をするだろうと私は思っています。結局、『もの』を使いこなしていくのは、現場の人達ですからね」

「写ミールVer.2」が、これからどんな現場で、どのように使われていくのか。思いもかけないところでブレイクするのではないか。それを筆者も楽しみにしたい。なにしろ、小杉の送り出す「もの」のあとから時代がついてくるのだから。

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